桂林市の旅


灰色の部分が広西チワン族自治区です。

2005年9月4日
 早朝7:30、出発。Zも旅慣れしてきたのだろう。だいぶ落ち着いている。内モンゴルの旅、湖南の旅をいっしょに過ごしてきたので、もういろいろ口出しすることもなくスムーズに進むことだろう。・・・そう期待したい。
 Yahooの天気予報では、初日は曇り、二日目は雨時々曇り、三日目は曇り、以降は晴れであった。初日は桂林へ移動と桂林市内観光、二日目は河下り、三日目は南寧へ移動及び南寧市内観光となっているので、少々雨が降っても大丈夫と思うが、四日目からは少しハードになるので、是非晴れてもらいたいものだ。
 アパートを出た段階では、雨がポツリポツリと降っている程度。傘をさすほどではないが、雨を恐れながらではタクシーの料金交渉がうまくいかない。傘を開いて、並んだタクシーをじっくりと眺め回す。最近は、ガソリンの値上がりが激しく、料金交渉が非常に難しい。乗用車系のタクシーは強気で、値切りに応じないので、小型貨物車系のタクシーを選んで交渉を始めることにした。と言っても、値切りの主役はZ。私が「とりあえず30RMBから切り出しなよ」というと、Zは早速「空港まで30RMB!」と運転手に向かって投げかける。50RMBという回答が返ってくるかなと思いきや、ぶつぶつ言いながらも「40RMB」と返事があった。すかさず私が「なら35RMBで決まりだ」と口を出す。Zも「35RMBじゃないと行かないわよ」と声を合わせる。二人の勢いに負けて、運転手もしぶしぶ「わかったよー」と同意。Zの肩を叩いて乗車した。
 タクシーの運転手たちは、毎年春節など様々な時期に団結を固め値上げに入るが、個人主義の強い中国では団結はあまり長続きせず、値崩れが早い。だが、今回はガソリンの値上げだけでなく、供給不足による待ち行列や一度に購入できる量の制限という悪条件が重なっているために、「値上げは不可避」という雰囲気が出来上がっている。そんなわけでアパートを出た時には、心の中で50RMBも覚悟していたから、35RMBをゲットできたのは非常に嬉しい(以前はずっと30RMB)。

  一度はOKしたものの、運転しながらぶつぶつと文句を言う運転手。私だけだと、「一度OKしたんだから、文句を言うな!」で終わるのだが、Zは違う。運転手がもらす愚痴に一々反論するのだ。運転手が「今はガソリンが高いんだぞ」と言えば、「だから、いつもより5RMB高くてもOKしたでしょ。本当だったら乗りたくないんだから」と答え、「ガソリンは、ずっと並ばなければ手に入らないんだ」と言えば、「あなただってずっと客を乗せているわけじゃないでしょ。空き時間があるんだから、それが並ぶ時間だと思えばいいじゃない」とやり返す。相手はもう参っているんだから、それ以上言わなくてもいいと思うのだが、Zは聞き捨てならないようだ。もうそれぐらいにしてやれよと言おうかと思ったが、再度値上げを図る運転手も多い。Zがこの調子で言いつづけていれば、そんな欲気を出しようもないことだろう。そう考えてZの好きにさせておくことにした。

 8:00、飛行場の数十メートル手前にある交差点で下車。最近は空港での取り締まりが厳しく、正規でないタクシーは空港のそばで停車することができないのだ。普通の乗用車であれば、私用の車であると言い抜けも利くが貨物系の自動車ではそうはいかないからだ。そこが貨物系のタクシーの方が値切りやすい所以でもある。
 ボストンバックを下げて駐車場を抜けていく。湖南行きの時も、駐車場のそばで降りて歩いてターミナルに入ったからZも何の疑問ももたずについてくるが、他の人であれば(何で15RMB安くするために・・・)と不思議がられるかもしれない。そのときは、「そのほうが旅の気分が出るので」とでも答えるしかあるまい。どんな旅が素晴らしく感じられるかは本当に人様々だ。

 ターミナル(A棟)に入ると、入り口のすぐ横にあるエスカレーターで2Fのロビーに上がる。空港が大きくなってから、来る度に新しい発見があるが、今回もロビーが大きく変わっていた。ロビーの真中にプレハブ式で建てられたテナント店がずらりと並んでいたのである。ただでさえ狭いロビーがますます狭くなってなんだか息苦しい。
 電光掲示板で、チェックインカウンターの番号を確認すると、「A1」「A2」という見慣れぬ表示がある。そこで、カウンターを見渡して見ると、以前のように搭乗便とカウンターが一対一になっておらず、同じ時間帯の搭乗便をひとグループのカウンターで受ける方式になっていた。(その他、30分以内に離陸する便専用カウンターというのもあり)。
 搭乗券はもちろん、荷物に貼られるラベルもコンピュータで管理されているのだろうから、理論的にはそれでも問題がないだろう。私自身はこのような方式を見るのは多分初めてだが、そんなに無理のある仕組みにも見えない。カウンターごとで行列の長さが異なるということがなくなり、意外に合理的な仕組みなような気もする。私自身は知らないがどこかの国、或いは日本でも?採用されている方式なのかもしれない。
 だが、中国でこんな方式が問題なく実施されうるのだろうか?はなはだ疑問である。搭乗券を間違えて発行することはさすがに(あまり)ないだろうが、荷物を誤った搭乗便に乗せてしまうことはしょっちゅう起きそうである。

 疑念を抱きつつも、電光掲示板の前を離れ朝食を食べにB棟へと向かう。深セン空港はターミナルが二つあり、向かって右がA棟、左がB棟である。前回、この空港を利用したときにB棟でケンタッキーにあるのを発見していたので今回も利用させてもらうことにする。空港でもケンタッキーのメニューの値段は街中と全く同じ。広々としていて、客もまばらなので非常にお得な気分である。その上、本日、新メニューを発見。「エビ入り卵ナン巻き(鮮蝦鶏蛋巻)」である。さっそく注文する。Zは慎重派で新しいものには警戒心がわくらしく、無難な海鮮粥を注文。ポテトや飲み物も注文して二人で35RMB。セットメニューでなく、単品注文でこの値段だからメチャメチャ安い。2年前、 まだB棟が古かった頃だったと思うが、喫茶店でサンドイッチとコーヒーを注文したらそれだけで70RMBもした。その頃に比べると実にリーズナブルな料金で食事ができるようになったものだ。さて、「エビ入り卵ナン巻き(鮮蝦鶏蛋巻)」であるが、エビがぷりぷりしていて実に美味かった。(実は旅行を終えてからもこの味が忘れられず、なんどか朝のケンタッキーに出かけた)。

 食事を終えて、A棟へ戻る。さっそくチェックイン。搭乗券を打ち出すと、スタッフが何やらごにょごにょ言っている。「何て言ったの?」と聞き返すと、「いえ、こちらのことです」との返事。再び「はっ?」と聞くと、Zが後ろから「関係ないわよ。行き先をチェックしていただけよ」と声をかけてきた。そう言えば、「桂林○×■」と聞こえたような・・・。なんと声出し確認をしていたのだ。新人なのだろうか。或いは、新システムに移行したからミスを防ぐためにやっているのだろうか。後者だとしたら、ちょっと驚きだ。中国のどこでもこんなことをやるようになったら、この国にある不確実性もずいぶんと変わることだろう。もっとも、アバウトなところがこの国の魅力でもあるから、日本と同じになってもらっては困るのだが。(声出し確認と言えば、チケットの発券のときにもやってもらいたいものだ。中国に来て以来、すでに片手で数え切れないぐらい発券ミスを食らっている。今ではチケットを受け取ってから自分で声出し確認する習慣がついてしまった)。

 8:50、順調に審査ゲート通過。オートウォークに乗って奥へ進む。オートウォークの両脇には数メートル感覚で大きな水槽が並び中で熱帯魚が泳いでおり、いつも羨ましく思っていた。が、今はすでに同じぐらいの大きさの水槽を手に入れているので、さほど思うところもない。「やっぱりあれだね。水槽をもっと横に長くするか円状にぐるりと回すような形にして、餌を魚から一番遠い場所に落として、魚が急いで泳いでくるようにしたいね」と私が何気なくつぶやくと、Zが「言うのは好きなだけ言っても良いわよ。でも、もう絶対に水槽は買わないわよ」と釘をさしてきた。うーん、用心深い女だ。

 9:10、搭乗ゲート到着。搭乗まではまだまだ時間があるので、ずらりと並んだ椅子の一つに座って待機。今日の宿泊先をまだ決めていないので、「地球の歩き方」をペラペラとめくって情報収集をする。できれば、ここでいくつか候補を決めて、到着後のリムジンバスの中で携帯電話を使って料金確認をするという手順で行きたいところだ。
 ふと顔を上げると、Zが首を捻じ曲げ、隣の搭乗ゲートに目を向けている。「どうしたの?」と尋ねると、「長沙、長沙!」と指で電光ボードを示す。なるほど、隣は長沙行きのゲートか・・・。Zは今も湖南旅行が忘れられないらしい。湖南料理のうまさは格別だったからなぁ。桂林となると、桂林米粉ぐらいしか耳にしたことがないが、他に美味しい料理はあるのだろうか。

  9:50、搭乗開始。そして、離陸。もう慣れたかと思いきや、左右の手で肘掛をしっかりつかみ、両目をギュッとつぶるZ。毎回脅かしていては可哀想なので、今回は「Z!心配するな、死ぬときは俺も一緒だ」と力強く励ますだけに留める。もっとも、怖がるそぶりを見せるのは離陸の瞬間だけで、一旦機体浮いてしまうとケロリとした顔をしているから、それも不思議だ。

 離陸してしばらくすると、スチュワーデスが飲み物と食べ物を配り始めた。今日は何だろう。最近、ろくなものが出てこないからなぁ。まぁ、コーヒーが飲めればいいや。そう思いながら待っていると、飲み物はミネラルウォーターと菊茶のどちらかのみ。コーヒーどころか、コーラもオレンジジュースもない。ひっひどい。食べ物はナッツが一袋。これまでビスケット一袋というのがあったが、今回はナッツが一袋・・・。まぁ、短い距離だから、食べ物がしょぼいのは許せるが、コーヒーすら出ないのはあんまりだ。食事や飲み物もコストに反映されるわけだから、削りたい気持ちはわからないでものないが、チケットを買うときに食事のグレードがわかるようにならないものか・・・。あるいは、航空会社によってある程度判断できるのだろうか。というか、コーヒーぐらいだせ。ミネラルウォーターやお茶だったら、バスと同じだ。

 11:20、桂林着。手荷物受取所にて、深セン便のコンベアを探すが見つからない。電光ボードがついているのは、北京便だけだ。まさか、最後までこのままということはないだろう・・・。が、結局、表示は変わらず、私たちのボストンバッグが流れてきた。ものすごい手抜きもあるものだ。きっと、表示内容は手入力で行われるシステムなのだろう。担当者は早めの昼食か?

 11:40、リムジンバス乗車。一人20RMB。Zは高い、高いと声を上げる。「リムジン・バスはみんなこんなものだよ。広州空港のだって、16RMBじゃないか」となだめるが、耳に入らない様子だ。それが終わると、このリムジンバスが夜も運行しているかを乗車スタッフに聞くと言い出した。
 実は、桂林行きのエア・チケットを購入するときに、夜の8時発というのがあり、その便だと5割引だったのだ。Zは安いんだから、これにしよう!と宣言。だが、私が反対した。「夜着くと大変だし、フライトが遅れたりすると、一歩間違えたら夜中だよ。それにリムジンがなくなっちゃって、タクシーに乗らなきゃならなくなったら、もっとお金がかかるから、100RMBぐらいの差はとんじゃうよ」と言い立て、説得してなんとか昼の便にしたのだ。
 それを覚えていたらしい。乗車スタッフがチケット販売に来るとさっそく、Zは「このリムジンバスは夜中でも走っているのか?」と尋ねた。乗務員が「飛行機の便があれば、リムジンもありますよ」と答えると、Zは、ホラね、と得意げな顔でこちらを見る。(「リムジンだけの問題じゃないんだよ。だいたい、飛行機が遅れた場合もちゃんといるかは疑問だぞ」)と口にしかかったが、思いとどまった。また、そのときになったら言えばいい。

【料金所にて】

 リムジンは一路市内へ向かう。外の風景は今のところ特徴のない低い山々が見えるのみ。

【桂林駅】

 12:00、桂林駅の近くで下車。下車したものの、どの辺りにいるかわからない。「地球の歩き方」の地図と周囲の建物から現在地を把握しようと努力していると、Zが「どっち行くの?はやく行きましょう」とうるさい。日差しが強いので、外にいたくないのだ。「ちょっと待てよ。今、位置を確認してるんだから。適当に歩き始めても、また戻ってこなきゃならなくなったら意味がないだろ」と言うと、「大変だなぁ。○○(私の名前)と旅行するのは~」とぼやき始める。そこで、「わかった。それなら、お前がその店に入ってこの路の名前を聞いて来い」とZに指示。Zもやむなく従う。しばらくすると、店から出てきて、「上海路だって」と口を尖がらせながら言った。

 「上海路」となると、ホテルが並ぶ通りとは違う。一旦、駅前まで出たほうがよさそうだ。駅前まで出て、駅をパチリ、パチリとデジカメに収める。そのまま、今度は「上海路」と垂直に交わっている「中山南路」を下る。ここで黒服を着た18歳ぐらいの小柄な少年たちとすれ違った。ひどく目つきが悪い。獲物を狙う捕食動物のような眼でこちらを見やってくる。深センにも愚連隊のような黒服を着た男たちがウロウロしていることがあるが、あんな幼い子供のようなのはいない。荷物をひったくられるんじゃないかとボストンバッグを持つ手に力が入ったが、何事もなく去っていってくれた。ほっと胸を撫で下ろす。

 まず、「地球の歩き方」で紹介されていた「新城市ホテル」というのを探す。地図によると、「中山南路」の辺りにあるはずなのだ。だが、しばらく歩いても行き当たらない。もう一度地図をじっくりと見てみると、どうも道路から一つひっこんだ位置にあるようだ。「ちょっと行き過ぎちゃったみたいだね。戻ろうか?」とZに声をかけると、「私は絶対に戻らない。私は後戻りするのが大嫌いなの」と宣言されてしまった。うーん、こんなところで後戻りが嫌いと言われても・・・。
 やむなく、目の前にあった三ツ星クラスと思われるホテルにトライしてみることにした。ところが、フロントの料金表をみると、一番安い部屋で600RMB近くもする。一瞬で駄目出しをし、フロントに背を向ける。すると、フロントのスタッフが声をかけてきた。「割引があるから、安くなるわよ」とのこと。「いくらになるの?」と振り返って尋ねると、「7割引きで170RMB」と答えが返ってきた。(170RMBは妥当な線だが、7割引きはやり過ぎだ。何か問題があるんじゃないか・・・)と私は躊躇したが、Zは乗り気満々の様子だ。やむなく部屋の下見だけすることにした。
 部屋の状態は悪くなく、インターネットができるデスクトップコンピュータもついていた。ただ、お湯の供給が電気式でシャワーを浴びることぐらいしかできそうもない。7割引きをしなければならないような料金設定とこの電気式の熱水供給ではどうも安心できない。「ここでいいわよ」というZを抑えて、隣のホテルへ移った。
 隣のホテルは「臨桂ホテル」という「地球の歩き方」で紹介されているホテル。料金を聞いてみると、一泊100RMB。さきほどのホテルよりさらに安い。少し迷ったが、下見もせずにホテルを出た。さきほどのホテルもそうだが、駅の近くだというのにロビーも暗いし、客の姿もない。どうにも不安にさせられたからだ。Zが「○○(私の名前)は面倒臭いなぁ。全く、選り好みしすぎなのよ。ホテルなんてどこだっていいじゃない~」とぶつぶつ文句をいう。
 (おまえ~、ホテル選びでミスすると、いつまでも文句を言うくせに~)と私は心の中で叫ぶが、口には出さない。Zを相手にしても時間の無駄だ。こうなったら仕方がない。少しランクアップだ。同じく「地球の歩き方」で紹介されている「名城ホテル」へ行くことに決める。写真で見る限り、ハズレのなさそうなホテルだからだ。

  12:40、タクシー乗車。運転手に「名城ホテルに行ってくれ」と告げる。ところが、「名城ホテルなんて聞いたことがない」と返事が返ってきた。「えー、知らないの」と慌てたが、幸い、面している道路の名前を覚えていたので、「とりあえず『正陽路』まで行ってくれ」と追加した。「正陽路ねぇ」と嫌そうな運転手。「そこにも三ツ星のホテルがあるけど、そこじゃ駄目なの」と投げかけてくる。「ちょっと行った向こうにもいいホテルがあるよ」と立て続けに提案だ。
 うーん、別に名城ホテルじゃなくては駄目だということもないんだが、どうも運転手の強引さが気になる。バック・リベートをもらえるホテルに連れて行きたくて、「知らない」と言っているのではないだろうか。根拠はないが、桂林と言えば、観光客ズレしている人々が多いことで有名だ。やはり、『名城ホテル』で押し通そう。「とにかく『正陽路』まで行ってくれ」と繰り返した。

 12:50、「正陽路」到着。地図によると、この辺りに、「名城ホテル」があるはずだが見当たらない。ともあれ、進むしかない。恐らくこっちの方だろうと見当をつけて歩行者専用となっているらしい石畳の道路を進んでいく。両脇は商店街のようだが、人がほとんどおらず、お店も閉まっている。うーん、これは失敗だったかなぁと不安に襲われだした頃、Zが「○○(私の名前)、道わからないの?」と攻撃的に話かけてくる。日差しが強くても文句を言うし、お腹が空いても文句を言うし、ちょっと歩いただけで文句を言うし、Zと旅行をするのは実に大変だ。(Zに言わせると、私と旅行をするのは大変だということらしい)。

 「こっちで正しいはずだ」とはったりをかまして、歩き続ける。・・・と、十字路のところに、「名城ホテル」の文字が見えた。しめたとばかりに、私は 「見ろよ。あそこだ。俺の言った通りだろう」と胸を張ってホテルを指差す。Zは、本当なの?と疑わしげに前方に目をやった後、不承不承ながら、「確かにあるわね」と口に出した。

 1:00、部屋の下見を済ませてチェックイン。宿泊料金は220RMB/泊のところを、2泊するからとZが値切って208RMB/泊となった。さきほど訪れたホテルと違って、フロントのスタッフがはきはきしていてロビー全体に明るさがある。ちらりとZを見ると、Zの不満顔がいつの間にか笑顔に変わっていた。チェックインのついでに、明日の「漓江下り」の予約も済ませることにした。
 フロントの壁に目をやると、料金表が貼ってあり、「外賓(外国の客)430RMB」、「内賓(国内の客)245RMB」とある。
 外国人と中国人の間に大きな料金差があることは「地球の歩き方」を読んで知っていた。出発前は、とりあえず中国人ということで押してみよう、しゃべりをZがメインで担当すればなんとかなるだろう、ということでZと話がついていた。てっきりホテル内の旅行社で申し込むものだと思っていたのだ。
 ところが、ホテルのフロントでの申し込みになってしまったので、中国人で押し通すもなにもない。さっきパスポートを出したばかりだ。弱ったなと思っていると、Zが「彼は外国人なんだけど、私と同じ中国人の料金でいいわよね」とずけずけと尋ねた。すると、フロントのスタッフは「大丈夫よ。彼は中国語が上手だから。ガイドの話が聞ければ問題ないわ」とやや自信なげにだが答えた。 
 (本当に大丈夫かなぁ~、まぁ、最悪追加でお金を払えばいいか・・・)。そう考えて、支払いを済ませた。申込み書にサインもする。だが、ここでまたもや不安に・・・。申込み書のサインが私の名前そのままではないか。どうみても日本人の名前である。これで問題なく通るのか?そう思って、尋ねてみると、「大丈夫、大丈夫」とのこと。こうなったら、当たって砕けろしかない。
 (注:後日気づいたのだが、私はパスポート以外に居留証も所有している。居留証がある場合には「内賓(国内の客)」扱いになるケースが多いようだ。だから、もともと心配する必要がなかったのかもしれない)。

【お昼ご飯(1)】

 

【お昼ご飯(2)】

 

 1:20、部屋に荷物をおくと、さっそく外へ出る。ホテル対面のレストランで食事。愛想のいい店員さんが注文を取りにくる。桂林米粉と紅焼豆腐と野菜炒めを頼む。合計44RMB。本場の米粉の味はどうか?確かに、深センのものより美味い。ただ、かなり微妙な差で、そのためだけに桂林まで来ようというほどのものではなかった。湖南料理は本当に美味しくて、深センにある湖南料理店とは比較にならない味を出していたのだが・・・。
 紅焼豆腐と野菜炒めも十分に美味しく、夕食もここにしようよとZを誘う。(実際には、別のところで食べた)。

  次の目的地は「七星岩公園」だ。地図によると、市内を走る「漓江」を「解放橋」を越えて渡ればすぐに「七星岩公園」だ。地図では「漓江」まですぐそこだが、実際のところはどうなのか。遠いかもしれないからタクシーで行こうか。そうZと話していると、レストランの店員さんが「歩いて行ける距離よ」と教えてくれた。そこで、歩いて「七星岩公園」に向かうことになった。

 1:55、レストランを出る。地図を頼りに「漓江」の川岸までたどり着く。店員さんの言った通り、5分もしないうちに到着した。川岸は歩道が整備されていて、のんびりと散策できる。桂林と言えば、飛びぬけて有名な観光地だから人でごった返しているのかと思ったが、人影はまばら・・・。Zが「ここの自動車はやけにゆっくり走っているのね。人も少ないし、のんびりできていいわねぇ~」と感想をもらす。そう言えば、私たちが乗ったタクシーもずいぶんとゆっくり車を走らせていた。私たちを別のホテルに誘導するための時間稼ぎだとばかり思っていたが、考え違いだったようだ。(Zは、自動車がゆっくり走っているという事実がずいぶんと気になっていたらしく、その後もタクシーに乗る度になぜゆっくり走るのかと尋ねていた。結論は規制が厳しいということだったようだが、本当かどうかはわからない)。

【漓江-市内-】

 

 川岸を「解放橋」に向かって歩いていくと、下り階段があり、その先に小さな船着場が設けられている。見ると、数船の竹製の筏舟がとまっている。そう言えば、同僚のSさんが、桂林には「漓江」の河下り以外に筏乗りも楽しめると言っていた。あれがそうか。私たちが興味津々で筏を眺めていると、筏のそばでおしゃべりに興じていたおばさんが飛び上がるようにして階段を駆け上ってきた。
 階段を上るのもまどろっこしいらしく、三分の二ほどまで上がったところで、欄干越しに口から泡を飛ばしながら話し掛けてくる。
 「の、乗らない?とても気持ちいいわよ」
 「いくら?」。乗る気満々だったので、ついつい調子よく応じてしまった。
 「30RMBよ」
 「高いなー」。口は文句を言っているが、身体はすでに階段を下り始めていた。Zも後ろにくっついてくる。筏には、すでに船頭さんが乗り込んで私たちを待っていた。
 「この筏、大丈夫なの?」と質問すると、
 「大丈夫、大丈夫」とおばさんが応じる。本当は、筏自体が大丈夫かというよりも、筏ごとどこかに連れて行かれないかが心配だったのだが、聞くわけにもいかない。というか、聞いても仕方がないか。
 おっかなびっくり筏に乗り込み、備え付けの椅子に腰を下す。もちろん、椅子も竹製だ。
 「先にお金払ってね」とおばさんが手のひらをこちらに向けてくる。
 「先にお金払うのかぁ。大丈夫なの」と私が聞く。
 「大丈夫よ。私たち二人が自分でやっているんだもの」
 (だから怪しいんだけどね・・・)と思ったが、これ以上ケチをつけても仕方がない。30RMBを払った。

 「伏波山に行くか、象山に行くか?」と船頭さんが尋ねたので、「伏波山」と答えた。「象山」は、後で行く予定があったからだ。私たちの答えを聞くと、船頭さんが川上に向かって漕ぎ出す。おばさんは岸で見送り。

【筏下り<1>-漓江-】

 

 すっかり快晴となった桂林の空の下、水しぶきを上げながら筏が進む。Zは「本当にいい天気ねぇ」と大喜び。同時に「あの天気予報は全然当てにならないわ」となぜか天気予報をこき下ろす。天気予報に文句を言うのは、今日は何度目だろう。どうやら、天気が良いのを喜ぶ一方で、日差しが肌に当たるのを気にしているらしい。

 背もたれが斜めに据え付けられているので、足を伸ばしゆったりと半分仰向けになって座った。水面で冷やされた風が顔の表面を走って川下へと流れていく。時々、筏に当たって跳ね上がった水滴も混じって一層爽快だ。Zは靴を脱いで、足を川の中に入れバシャバシャと音を立てはしゃいでいる。「危ないから気をつけろよ!」と注意しても全く耳に入らない様子だ。

【筏下り<2>-漓江-】

 

 本来歩いて渡るはずだった「解放橋」の下に船が入ると、日差しが途切れ一層涼しくなる。Zは足を水中から引き上げると、椅子に腰を下ろし、船頭さんを振り向いた。声を大きくして、「帰りは向こう岸の橋のたもとに下してくれる?」と船頭さんに向かって呼びかける。船頭さんが「いいよ~」と応諾すると、今度は私の方を向いて、「これで橋を歩かなくて済むわ。私って頭いいでしょ」とにんまり。

【筏下り<3>-漓江-】

 

【筏下り<4>-漓江-】

 

 橋の下を抜けた辺りのところで、数人の男たちが川の中でウロウロしているのが見えた。中の一人は細い投槍のようなものを手にしている。
 「ほら、魚取りをしているわ」とZが指し示す。
 魚取りというが、一人が槍のようなもの持っている以外は特に道具らしきものはない。手ですくったり、槍で指したりするのだろうか。頻繁にもぐりを繰り返しているようだから、或いは底に網でもはってあるのかもしれない。
 「私もね。子供の頃、よく魚を取ったのよ」と珍しくZが昔の話をしだした。
 「取ったというと、どうやってとったの?」
 「手で取るのよ」
 「手で・・・」
 「そうよ。手で捕まえるの」と事も無げに言う。
 (手でねぇ~)。網で捕まえるのならわかるが、手でどうやって捕まえるのか。私には想像もつかない。
 「一度、すっごく悔しいことがあったの」とZが唇を歪める。
 「何があったんだ?」
 「大きぃーい魚を捕まえて、岸へ投げたのよ。やったー!と思ったら、ポン、ポンと尾ひれで跳ねて、川に戻っちゃったの」
 「へぇー」。(手でねぇ~)と再び感心。
 「忘れたくても、忘れられないわ・・・」とZは川をにらみつける。その目は、子供の頃取り損ねた魚が今も見えるかのようだ。 

【筏下り<5>-漓江-】

 

 「もう一つあるのよ」
 「どんな事?」
 「本当にびっくりしたのよ」
 「わかった。何なの?」
 「川の中にね。穴がたくさんあるでしょ」
 「穴・・・。それで?」
 「その中には魚がよくいるんだけどね」
 「うん」
 「ぎゅっと捕まえて、やったーと思ったら・・・。でっかい蛇がにゅるにゅる、にゅるって出てきたのよ。死ぬほどびっくりしたわ。本当に死ぬかと思った」と驚愕の表情をしてみせる。
 「うーん」。蛇が出てきたのがすごいというよりも、何がいるかもわからないのに手をつっこめる無謀さがすごい。今も性格はほとんど変わっていないようだが。

 私も小学生の頃、近所の川でよく遊んだ。網で小魚をすくったり、ヤクルトやイチゴの容器を組み合わせて、おもちゃの船を作ったものだ。当時は考えもしなかったが、あれも幸せの一つだったのだなと懐かしく思う。

  いやいや、感傷に浸るにはまだ若い。再び、背もたれに寄りかかって、そよぐ風を楽しんだ。このまま、ずうっと寝そべっていたい。明日の「漓江川下り」をキャンセルして、この筏の上で数時間を過ごしたほうが余程楽しいのではないか?そんな考えが頭をよぎる。でも、キャンセルするのは難しいだろうし、あれだけの料金をとるからには何かいいところがあるのだろう・・・。

【筏下り<6>-漓江-】

 

 「伏波山」の近くまで来ると、そこでユーターン。Zがもう戻るのかと文句を言うと、「今日は風が強いから、これ以上はいけないよ」と船頭さんが説明をした。結局、行きは20分ほどかかったが、帰りは下りの勢いに流されて10分ほどで岸へ到着。船頭さんは、「象山も行くかい?このまま行くのだったら、一人10RMBでいいよ」と盛んに話を持ちかけてきたが、十分満足していたし、まだ行きたいところがたくさんあるので、断ることにした。

【筏下り<7>-漓江-】

 

  川沿いを歩いて、先ほど潜り抜けてきた橋のところまで戻る。対岸に船をつけてもらったので、橋を渡らずに反対側まで来たことになる。「〇〇(私の名前)、私のおかげで歩かなくて済んだわね。私と一緒で良かったね」とZが再び得意がった。(俺は橋の上をのんびり歩くのが好きなんだけどね)と言いたかったが、グッとこらえた。「だったら、歩いて行って戻ってきなさいよ」とかつまらない事を言われてしまうのが落ちだからだ。

【桂林市内-七星岩公園近く-】

 

 橋に沿った大通りに出てしばらく歩くと、七星岩が目に飛び込んでくる。広東省肇慶市の七星岩と大して変わりのない大きさのようだけれど、どうなんだろう。遠目から見ているせいだろうか。むしろ、肇慶の七星岩の方が立派な気がする。

【七星岩公園<1>】

 

 入場料65RMB/人を払って中へ入る。肇慶の七星岩がいくらだったか忘れたが、たいして変わらない料金だった気がする(帰宅後、調べてみると2002年の時点で50RMBだった)。すぐに石橋が現れたので、渡りながら改めて七星岩のいくつかを眺める。どうもしっくりしない。ずんぐりむっくりした形は同じなのだが、肇慶の七星岩のように独立して立っているのではなく、他の山と連なっているような感じである。その上、岩肌があまり露出していないので、なんだか違うぞという印象を受けた。もっとも、こちらが本場なのだから、こちらを先に見てから肇慶へ行けば、肇慶のはちょっと違うぞ?と思ったかもしれない。

【七星岩公園<2>】

 入場門のところで、入口のスタッフに、「先に鍾乳洞に行け」と言われていたので立て札を頼りにそちらへ向かう。が、意外に長い道のりである上に、行き先を示すプレートの数が少ないため、やや不安な足取りとなる。途中でトイレに寄ったことこともあって、(もしや、もう閉まってしまったのでは・・・)と思い始めたころにようやく到着。

【七星岩公園<3>】

  チケットを見せて改札を抜ける。改札のスタッフが「下で待っていてください。10分ぐらい経ったら出発しますので」と教えてくれたので、階段を下りたところにある洞窟の入り口のところで歩みを止めた。先に下りていた数人の客たちも、ぶらぶらして時間をつぶしているようだ。片隅に小さな机があり、そこにガイド役らしきスタッフが二人、ちょこん座っておしゃべりをしている声が洞窟に響く。
 十分ほどが過ぎ、さらに数人の客が降りてきたところで、スタッフが声をあげて皆を招き寄せる。二人揃って立ち上がり、「それでは鍾乳洞の案内を始めますが、その前にお話があります。ここでは、○×○(七星岩公園だったか、桂林だったか忘れた)を紹介したCDを販売しています。興味のある方は購入していってください」といきなり宣伝を始めた。私たちはもちろん、他の客も無言で答えるのみ。十数秒が過ぎ、「それでは案内を始めます!」と元気よく出発。売れても売れなくてもどっちでも良し!あっさりしていていいが、何かが違うような・・・。

【七星岩公園<4>】

 鍾乳洞に突入~!は良かったが、ガイドがあちこちにある、鍾乳洞が形作った造型を解説し始めるにつれ、興ざめしてくる。中国の鍾乳洞ではよくあることだが、自然が作った様々な造詣を動物や人に見立てて、しつこいぐらい解説したり、物語を話してくる。それも、自然な範囲ならいいが、どうみても無理やりなものが多い。中には、鍾乳石を削って動物の形にしてあったりする。その上、カラフルなネオン。せっかくの自然の造型が、緑や黄色や赤のハデハデなネオンで台無し。

【七星岩公園<5>】

 

 いろいろ不満はあるが、この鍾乳洞の巨大さはやはりすごい。途中、ガイドが歌を披露したりして、ゆっくり歩いて回るが、30分以上歩いてもまだ外に出ない。それに、はではでネオンを無視さえすれば、自然が作り出した様々な造型にはやはり驚嘆させられる。空気もひんやりしていて気持ちがいい。

【七星岩公園<6>】

  私にとっては、毒々しいぐらいのネオンライトであるが、中国人であるZには当然のことながら、不思議でもなんでもない。ガイドが語る動物や人を象った鍾乳石にまつわる(作り)話も、それなりに楽しめるらしい。他の客に混じって熱心に聞いている。そもそも中国人に受けるようにつくってある観光地だから、喜んで当たり前なのだろう。こういう時に残念なのは、中国以外の国の人たちをほとんど知らないこと。もっとあちこち行っていれば、日本との比較だけじゃなく、もっとたくさんの比較が出来て面白いのに。

  途中、ガイドが短い歌を披露してくれたりして、それなりに盛り上がりをみせるものの、長い鍾乳洞にいささか飽きがきたころ、ようやく出口に辿り着いた(3:50)。真っ暗な洞窟を歩きつづけたため、疲労気味。その上、お腹を壊したらしく、体調が悪い。もはや、七星岩巡りどころではない。肇慶ほど綺麗ではないし、遠くから眺めるだけで満足としておこう。そう考えて出口に向かおうとすると、Zが「動物園に行きたい」と言い出した。

 「え~、動物園?でも、こんな公園内にある動物園なんて、きっとつまらないよ」と説得してみるが、全く効果なし。絶対に行くと言って聞かない。しぶしぶ同行する。動物園についた頃には、私の腹痛は頂点に達し、トイレへ駆け込んだ。

  トイレから出てくると、Zが外で待っており、「もう、いいわ。出ましょう」と私に告げる。どうやら、期待していたほど楽しくなかったらしい。あれだけ熱心に行きたがっていたところから想像すると、何かお目当ての動物があって、それが見つからなかったのだろう。ともあれ、異論はない。動物園を出て、さらに七星岩公園の出口へ向かった。

   4:20、出口から外へ。出てみて、入口と別の場所だと気づいた。全く方向音痴の私と時に素晴らしい方向感覚を示すZ。だが、頭を使って考え出すとその素晴らしい方向感覚も台無しに・・・。Zの「こっち、こっち!」という言葉にのせられて10分ほど歩くが、一向に河に出ない。河を越えてきたのだから、これはおかしい。諦めて、タクシーに乗った(4:30)。
 
 Zはごねたが、運転手には「独秀峰」へ向かってもらう。Zが横で「疲れた。もうホテルへ帰る」とうるさいが、なんとかなだめる。桂林の市内観光は今日一日だけにするつもりだから、もう一つぐらいは観光地をまわっておきたいのだ。

 4:40、「独秀峰」着。入口から様子を見ていると、どうやらガイド付きらしい。いやな予感がするなと思いながら入場料を聞いてみると、「50RMB/人」とのこと。岩山一個で50RMBは高すぎる。ガイドなしにはできないのかと思ったが、どうも選択の余地のない雰囲気だ。「やめようよ」と疲れ気味のZが促す。しかし、ここまで来て、50RMBを惜しんで「独秀峰」は行かなかった・・・では、もったいない。旅のトータル・コストというものがある。そう自分を慰めながら、チケットを購入。
  入場料を支払って、門をくぐると待ち受けていたガイドが小さな旗をもって近づいてきた。「これからガイドをさせてもらう○○です」と挨拶をする。Zが「ガイド料はチケット代に含まれているの?」と聞くと、「そうです」と返事があった。続けて歩行ルートの説明を始めたガイドをZに任せて、周囲に目をやると、ガイドなしで歩いている人が少なくない。ガイド嫌いの私としては、このガイドについてずっと過ごすのはあまりも苦痛だ。「ガイドなしで歩いても良いのか?」と尋ねると、「構いませんよ」との返事。少しもったいない気もしたが、思い切ってガイドを断り自分たちだけで行くことにした。

 改めてガイドなしで歩いている人たちに目をやると、どうも私たちとは違う入場門から入ってきているようだ。地元の人専用の入口があるのか、或いは、私たちが知らない入場口があるのだろうか。とは言え、すでに払ってしまったチケット代は戻ってこない。悩むのはやめて先に進むことにした。

*追記(2005年12月12日):帰宅後、インターネットで調べてみると、「独秀峰」の入場料が10RMBや15RMBだった時期もあったらしい。現在は50RMBが標準のようだが、60RMBだと書いてあるホームページもある。季節によって異なるのかもしれない。インターネット上で予約すると、35RMBになるというホームページもあったが、本当の意味で安くなるのかはわからない。

  まず、入場門の正面にあった建物の中に入る。民族衣装を来た門衛がドアを開け私たちを招きいれた。旅行から戻って調べたことだが、「独秀峰」の辺りは隋・唐の頃から、政府系の建物が多かったらしい。それが明の時代になって、「独秀峰」を囲むように城壁が建てられたとのことである。その中心がこの建物ということらしいが、苦労して王府を演出してあるものの、どうも気持ちがのらない。結局、二部屋目で飽きてしまい、バックして入口から出てしまった。

 建物を迂回して、まっすぐしばらく歩くと「独秀峰」のふもとに到着。くたびれ切っているZは、岩山の絶壁をみて及び腰。入口から急な階段が続くから無理もない。私の体調もベストではないので、しばらく躊躇したが、登らなければ「独秀峰」に来たとは言えないだろう。それに、降りてきた人たちを見る限り、そんなに大変ではなさそうだ。試みに、入口のスタッフに尋ねてみると、20分ぐらいで登って降りて来られるとのこと。思い切ってトライすることにした。

 階段を上がり始めて10歩ほどで、「疲れた、疲れた」と連発するZ。やむなく、Zのリュックをもってやることにした。自分のリュックを背中に、Zのリュックをお腹に乗せて登る私。「独秀峰」に賭ける情熱をご理解頂けるだろうか。
 普通、ここまで頑張っている姿をみれば、例えへとへとになっていようとついてくるのが人間の情というもの。ところがZは違った。5分ほど登って踊り場に出たところで、休憩している私の手を握ってお腹のところへ手をもっていく。何を言うかと思えば、「ほら、○〇(私の名前)、ドクン、ドクンって言っているでしょ。心臓じゃないのよ」と真剣な眼差しである。「それって、子宮がドクン、ドクンしてるってこと?」と私が呆れ顔で聞き返すと、Zは、うん、うん、と首を上下に振って頷いた。「つまり、子宮がドクン、ドクンというほど疲れていると・・・」。さらに大きく頷くZ。
 うーん、よくわからない。「ほらっ、いくぞ!」と声をかけ階段を上り始める。後ろを振り向くと当てが外れたような顔をしてZがついてくる。

 15分ほど上った後、ようやく頂上到着。小さなお店があるのを見つけると、Zは「水、水!」とミネラルウォーターを購入。ボトルを手に取ると、ごくごくと喉に流し込む。ふぅ~と気持ちよさそうに息を吐き、ようやく周囲の景色に目をやった。

【桂林市内-独秀峰頂上より<1>-】

 

【桂林市内-独秀峰頂上より<2>-】

 

【桂林市内-独秀峰頂上より<3>-】

 

 頂上からは桂林市内が広く見渡せる。先ほど筏から見た「伏波山」が河のそばに聳え立っている。「伏波山」だけでなく、市内が山と緑に溢れているのがよくわかる。「ほらっ、Z!大変だったけど、上って良かっただろ」と私が言うと、Zは「全然大変じゃなかった。アパートの階段と同じぐらいだったわ」と元気よく答える。「いや、さっき『子宮がドクンドクン』とかって大騒ぎしていただろ」と突っ込むと、「ハハハ」と笑ってごまかした。

【桂林市内-独秀峰頂上より<4>-】

 

【桂林市内-独秀峰頂上より<5>-】

 

【独秀峰の下り】

 

 5:20、独秀峰を下り、公園から出た。タクシーに乗ってホテルへ戻る。支払いをZに頼んで下車したが、Zがなかなか降りてこない。どうやら運転手ともめているらしい。様子を見ていると、しばらくして何やら捨て台詞を吐いて、下車した。「『お釣りが足りない』とか言って、1RMB少なく渡そうとするのよ。さっきの運転手もそうだったし、桂林のタクシーって本当に腹が立つわ」とカンカンである。「それでどうしたの?」と尋ねると、「先に渡した10RMBを返してもらって、小銭で渡したわ」。うーん、立派。

  5:30、ホテルで休憩。一眠り。
 7:45、疲れてクタクタだったので、このままずっと眠っていたい気分であったが、せっかくの桂林の夜をゴロゴロして過ごすわけにもいかない。なんとか起き上がって、ホテルを出た。

 ホテルの外は驚くほどの人出。深センや広州の商業街とさほど変わらない。昼間は全く人気がなかったのにこうも変わるものかと驚いた。活気のある歩行者天国を抜け、中山路へ向かう。「すごく外国人が多いわねぇ」とZが感想をもらした。確かに、多い。深センや広州などよりよほど目立つ。中国観光のメッカとして、旅行客が
集中するのだろうか。

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【夜の桂林<1>】

 

 中山路へ出ると、露店がずらり。数百メートルの距離で並んでいる。アクセサリー屋がほとんどで、Zは大喜び。私を引きずるようにして、歩き回った。この調子ではいつまで経ってもショッピングが続きそうだと気づいた私は、食事の出来る場所を探す。しかし、これだけ露店があるのに、食べ物の屋台がほとんどない。あってもデザート系のものばかりだ。弱ったなぁと道路に目をやったところで、珍しいものが目に入ってきた。二階建ての観光バス。もちろん、深センにもあるのだが、内陸でみると意外感がある。時間があれば、あれに乗って桂林市内を一周したいところだが、今回(いつものことだ)はスケジュールが厳しいので、とても無理。

【夜の桂林<2>】

 

【夜の桂林<3>】

 

 露店を隅々まで歩き尽くしたところで、ようやくプレハブ型の露店を発見。客入りが良いようだし、味も間違いないことだろうと入店した。

【夕食<1>】

 

 プレハブのお店なので、中は大型屋台のような雰囲気。旅行客よりは、地元で働いている人たちが多そうだ。皆、鍋を頼んでつついているので、私たちも鍋にすることにした。鍋と言えば、普段は鶏肉が主だが、今日は地元のお魚を楽しむことにした。値段は30RMB。内陸の屋台もどきのお店にしては、ちょっと高い気もしたが、味はばつぐん。プラス麺料理の5RMBと野菜炒めの8RMBで合計43RMBの夕食となった。もう一度来たいとは思うが、明日はまた明日で別の店を楽しんでみたいし、そうもいかない。

【夕食<2>】

 

【夕食<3>】

 

【夕食<4>】

 

 食事を食べた後は、もはや散歩する元気もなく、一路ホテルへ帰着(9:30)。桂林の夜には華やかながらも、深センや広州では失われた中国らしさがまだ残されている。それだからこそ、多くの外国人が今なお集まってくるのかもしれない。
 明日は、有名な「漓江下り」の船へ初乗船。順調に進むといいなぁ。

2005年9月5日
 7:30、起床。
 7:50、部屋を出る。さあ、中国人ツアーに参加。本当に大丈夫か?
 7:55、ロビーにはすでに数人の客がたむろっている。おそらく、私たちと同じ「漓江下り」ツアーに参加する客たちだろう。ロビーにある数少ないソファーが占領されてしまっているので、やむなく立って待つ。
 8:00、30過ぎぐらいの女性がロビーにつかつかと入ってきてフロントで何かのチェックを始めた。あれは、ツアーの添乗員だろうか?と思っているとしばらくして、こちらを振り向き、「ついてきてください。外にバスが待っていますので・・・」と皆に声をかけた。外は小雨模様。皆、半分駆け足で女性の後ろをついて行く。「ここは歩行者専用道路なので、一つ外の道路にバスは待っています」と説明が続く。なるほど、歩行者天国にもデメリットはあるのだなぁ。

 中型のバスに乗るとすぐに出発。出発は早かったが、まっすぐ埠頭に向かうわけではなかった。市内にある数軒のホテルを回り、次々と客を拾っていく。その間も雨が徐々に強くなっていく。

 市内の客を全て集め終わると、ようやく埠頭に向けて走り出した。ここからが仕事だと言わんばかりに添乗員が立ち上がって説明を始める。基本ルートとオプションルートの説明。船が到着する陽朔までは基本ルートである。そこから周辺の観光地に出るのがオプションルートのようだ。オプションルートは追加料金が必要になるとのこと。是非ともオプションルートに参加して欲しいらしく、「基本ルートだけでは私たちの儲けはない」なんてことまで言う。きっと土産物屋めぐりをさせられるに違いない。中国のツアー(中国に限らないようだが)が土産物屋めぐりで利益を出すというのには慣れっこになっている。だからこそ、高くついても個人旅行を主体としているわけだが、今日のようなツアーでしか船に乗れないという状況でもこんな商売をするなんてちょっとひどい。
 陽朔は良い場所らしく、長期滞在をする人も多いと聞いている。陽朔で宿泊する人は帰りのバスチケットを捨て、そうでない人はツアーバスで帰るというのが一般的だということであったが、どうやらツアーバスで帰るためにはオプションツアーに参加する必要がありそうだ。そうでなくとも、土産物屋めぐりは避けられそうもない。だったら、桂林までは自力で戻るとしよう。陽朔から桂林までのバス代はたいしたことないからベストの選択だろう。

 
9:30、バス停車。埠頭に着いたのかと思ったら、土産物屋である。(最初から土産物屋かよ)といささかあきれたが、仕方がない。他の客に混じって店内をぶらぶらする。翡翠や金製のアクセサリーがたくさん並べられたショーケースの間を半分うんざりしながら歩き回る。Zの方は結構楽しみながら「これ、綺麗。あれ、綺麗」とはしゃいで私の後ろをついてきた。

 9:50、店の入口近くに集合。ガイドの説明が始まる。船の座席が2Fの方がいい人は10RMB追加してチケットを受け取ってくださいとのこと。2Fの方が景色がいいかな?となんとなく考え2Fのチケットを購入。そして、オプション・ツアーの参加者の募集。どっと質問の嵐が始まる。その隙間を縫って、「私たちはオプション・ツアーに参加しない。桂林市内へは自分たちで帰ります」と伝えると、「埠頭は向こうだから自分たちで行ってください」と醒めた表情で答えた。

 ツアーに参加しないとなったら放り出しか?と思ったが、うるさいガイドに付きまとわれるより良いのかもしれない。気を取り直して、建物を出て指差された方向に向かう。建物の外にある駐車場を抜けて歩いていく。他にも私たちと同じ選択をした人たちがいるようで、心もとない様子で「こっちでいいのよね」などと口に出しながら歩いている。
 しかし、あのオプション・ツアーに対する皆の反応は度過ぎているのではないか。どうもサクラが混じっているような気がしてならない。10年ほど昔の話になるが、西安でツアーバスに乗車することになった。バスがいっぱいになったら出発するというので、バスの中を見ると、すでに半分ぐらいの席が埋まっている。これならすぐに出発するだろうと、チケットを購入して乗車した。乗客にやけに老人が多いのでおかしいなと思っていたら、全員がサクラであった。バスがいっぱいになる頃に、乗っていた老人たちは全員下車。隣のバスへ移っていった。出発までさらに一時間近く待たされるはめになった。人件費の安い中国ならではの大技である。果たして、桂林でも同様な方法が採用されているのだろうか。

  9:55、埠頭到着。船の手前でウィンドーブレーカーを売っている。船に乗る前にすでに肌寒いのだから、船上で風に吹かれたりしたら風邪をひきかねない。Zの「もったいないわよ」
という声を抑えて、一着30RMBでZと私の分を買った。

 素早く着込んで、乗船する。オプション・ツアーの説明を聞かなかった分だけ、皆より早い到着だ。1階は3人が向かい合って座ることのできるテーブルが左右の窓際に並べられている。大勢でがやがと楽しむタイプの座席だ。2階はどうだろう。

【漓江下り<1>】

 

【漓江下り<2>】

 

 階段の踊り場にトイレがあるのを確認。中国人ツアー客用の船ということで不安だったが、十分に綺麗だ。階段をもう一つあがると、甲板に出る。前部の運転席の後ろに小部屋があり、テーブルが二つ並べられているここが私たちの席のようだ。

【漓江下り<3>】

【漓江下り<4>】

 

 1階にあるのと全く同じ作りだ。特に席が広いということもない。10RMB余分に払ったことによる相違は見晴らしの良い景色だけということか。まぁ、10RMBだからな。

 10:35、船が動き始めた。甲板に出て、船が埠頭を離れるのを見守る。1階の人たちが2階に上がってくる様子はない。どうやら、しばらく2階には上がらないように指示されているらしい。なるほど、これなら2階席をとった価値があるというものだ。

【漓江下り<5>】

 

 すぐにスタッフがやってきて、メニューを客に見せて回る。どれもこれも馬鹿高い値段だ。「注文しないと食事はなしか?」と客の一人が尋ねると、「無料の食事も出るけれども、粗末な簡単な料理しか出ない」と答えがあった。皆、口々に不満を出し始める。高いチケットで儲けて、さらに食事で儲けようとする気か?というわけである。雇われの身のスタッフにそんな事を言っても始まらないと思うが、皆の不満はおさまらない。

 そのうち、階下でアナウンスがあり、部屋のスピーカーを通して桂林の紹介が始まった。これがまた、客の不満をかきたてた。「1階にはガイドがいて、2階はスピーカーか。余分にお金を払って、より低いサービスを受けなきゃならないなんてひどいじゃないか」と騒ぎ立てるのだ。
 だが、客の不満には慣れっこになっているのだろう。スタッフは湯のみを並べたり、お茶を入れたりしながら辛抱強く注文を待った後、誰も注文しそうもないことがはっきりすると、1階へ下がっていった。

  再び部屋の外に出て、甲板から川面に眼をやる。空は相変わらず曇っているが、川は意外に澄んでいる。浅い個所は川底が見えるほどだ。Zが「ほら、あそこに魚がいるわ!」と指差して騒ぐ。Zは川が見えるところに来ると、どこへ行っても魚がいる場所に気づく。最初は偶々のことと思っていたが、どうやらそうではないようだ。魚が跳ねて生み出す水紋が目に飛び込んでくるらしい。子供の頃、真剣に魚を追いかけていた習練(?)のたまものということだろうか。

【漓江下り<6>】

 

 1階と2階をつなぐ階段の踊り場まで下りていって、1階の様子をうかがってみる。皆楽しそうにわいわいやっているようだ。こっちの方が活気がありそうだが、日本人の私としては、静かに座っていられる少人数の部屋の方が良い。それに大勢の人がいると誰かが私が日本人だと気づくかもしれないので、気が気でなくなることだろう。気づかれたら、良くて質問攻め、悪ければ戦争や歴史問題で非難を受けかねない。そう考えると、妙にどきどきしてきて、慌てて2階の甲板まで戻った。

【漓江下り<7>】

 

 しばらくすると、外国人ツアー客用の埠頭が見えてきた。どこが中国人ツアー客用の船と違うのだろうかと埠頭に泊まっている船を目を凝らしてみるが、数十メートルほど距離があるのではっきりとわからなかった。私たちが乗ってきた船との構造上の違いとしては、2階の甲板にある小部屋の上にも登れるようになっているらしきことであった。きっと内装も異なるのだろうが、どのくらい差があるかはわからない。

【漓江下り<8>】

 

 11:00になると、再び放送が聞こえ始め、1階の客たちがどっと甲板に上がってきた。アナウンスが続き、川べりの山々の紹介が続く。山水画の世界にたとえられる、カルスト地形が地形が生み出した奇観に思わず見惚れてしまった・・・と書きたいところであるが、うーん、ちょっとなぁという感じであった。奇観と言えば奇観なのだけれども、貴州省の尖った山々の方が印象的だったし、江西省の三清山の岩や湖南省の張家界の奇景の方がはるかにインパクトが強かった。それらに比べると、ちょっとダレた感じが否めない。やはり、中国に来たばかりの頃に見ておくべきであった。そうであれば、心に残るものがあったに違いないといささか残念に思った。

【漓江下り<9>】

 

【漓江下り<10>】

 

【漓江下り<11>】

 

【漓江下り<12>】

【漓江下り<13>】

 

【漓江下り<14>】

 

 川の左手に小さな洞窟が現れた。何艘もの船が集っている。どうやら観光コースのひとつで、下船して中を訪れることができるようだ。桂林では、そんなツアー船があった様子はないから、陽朔発のツアー船だろうか。ただ、河を下るだけのこちらの船より余程面白そうだ。まぁ、一度は「漓江下り」を体験しとかなきゃ悔いが残るから、今回はこれで仕方がない。

【漓江下り<15>】

 

【漓江下り<16>】

 

 景色を見飽きて、ふと振り返ると、小皿に揚げ物を載せて甲板に上がってきた客がいる。小魚と芋の揚げ物だ。他の客とのやりとりを聞いたところによると、1Fのカウンターで販売しているようだ。たいした量もないのに、一皿15RMBと高い。しかし、朝から何も食べていないし、12:00も近いというのに、お昼もすぐには出てくる様子がない。仕方がないので、1Fに行き、お芋の揚げ物を買った。2Fへ戻ってZと一緒にぱくつく。

【漓江下り<17>】

 

 12:00になっても食事が来ないので、一体どこで食事を作っているのだろうと、探検に行った。すると、階段の踊り場のすぐ下のところのドアが開いている。覗くと、おばさんが一人で調理に取り掛かっているのが見える。なるほど、船の後部に厨房があったのか。パシャパシャと写真をとっていると、私に気づいたおばさんは、少し慌てた様子で「とっちゃ駄目よ」といいながら、私を追い出してドアを閉めた。

【漓江下り<18>】

 

【漓江下り<19>】

 

【漓江下り<20>】

【漓江下り<21>】

 

【漓江下り<22>】

 

【漓江下り<23>】

 

 「飯はまだか?」と甲板の手すりに寄りかかって待っていると、細長い筏に乗った男たちが私たちの船に向かってやってきた。実は、午前中、幾度となくこうした筏が現れては消えていった。危うくぶつかりそうになっては避ける筏たちをみて、当初、魚釣りでもしているのだろうかと思っていた。だが、じっくり見ていると、船にぶつかりそうになっているわけではなく、故意に寄せてきているのだと気づいた。2Fにいたので気づくのが遅れたが、彼らは行商をしにやってきているのだ。筏を上手に船の脇に寄せると、フックのようなものを使用して筏が船から離れないようにする。そして、筏の真中に据えてある箱から翡翠等を取り出して、窓際にいる船客たちに販売をするのだ。売れなくなったなと見定めると、次の船に向かって再び筏を漕ぎ出すという具合だ。これだけの数の筏が次々にやってくるということは、相当いい稼ぎになるのだろうか。上からみた限りでは、街で売っているものとたいした違いはないようだ。だが、筏に乗った男たちから買ったとなれば、それだけでも思い出になる。その演出が客の購買欲をそそっているのかもしれない。

【漓江下り<24>】

 

 12:30、ようやく食事がやってきた。予想以上に寂しい料理。おまけについてきたソーセージがメインに見えるほど。だが、私たちの正面に座った老夫婦のテーブルには全く別の料理が二皿ついてきている。どうやら、こっそり(?)1階へ行って注文を出していたらしい。メニューが来たときは、皆の怒りの声の中注文できなかったが、やはりせっかくの旅行なんだから・・・ということで後から注文に行ったのだろう。会話の端々から漏れ聞いたところでは、ご主人の方は軍人さんで、たまにしか夫婦で過ごせる時間はないとのこと。旅行のときぐらいは贅沢にやりたいと思うのも当然だろう。でも、軍人だと聞いて胸ドキドキ状態。とても、「日本人です」とは言えない。ともあれ、老夫婦は良い人たちで、自分たちが注文した料理を惜しげもなく振舞ってくれて、私たちの皿にこれでもかというぐらい料理を載せてくれた。おかげで結構良い食事ができた。ちなみに、隣に座ったのは、警察官。なんで!?今日は、日本語は絶対話さないぞ。

【漓江下り<25>】

 

【漓江下り<26>】

 

【漓江下り<27>】

 

 食事が終わったら昼寝。他の客も疲れたのか、飽きたのか、テーブルの上に頭を載せて寝入っている人が多い。「長すぎるよ。疲れちゃったよ」とうめいている客もいる。強く同感。

【漓江下り<28>】

 

【漓江下り<29>】

 

 なお、外国人客は私だけでなく、ブロンドの欧米人たちも何組かいた。外国人用の客船は埠頭にとまったままの様子だったし、或いは、シーズンオフの時は外国人であっても中国人ツアーに参加するように言われるのかもしれない。

【漓江下り<30>】

 

【漓江下り<31>】

 

【漓江下り<32>】

【漓江下り<33>】

 

 寝て、起きて、風景を少し見て、またうとうととする。そんなことを繰り返し、3時少し過ぎに、ようやく「陽朔」の埠頭に到着。長かった。もっと天気がよかったら感じも違ったのだろうかとなどと考えつつ、下船した。

【漓江下り<34>】

 

【漓江下り<35>】

 

 埠頭から続く道には、ずらっと土産物屋が並ぶ。中国であれば、どこの観光地でも売っているようなものばかりなので見る価値はあまりない。・・・が、長い。いつまで続くんだ。そう思い始めた頃に、ようやく道が途切れた。そこにバス停があり、観光地を回るバスが次々と発車している。今回は時間がないので、「西街」と呼ばれるショッピング街にしかいく時間がない。インフォメーション・センターらしきものがあったので、スタッフに尋ねてみると、「西街」へいくだけならバスに乗るほどのことはないとのこと。バイタクで行くことにした(5RMB)。

【陽朔<1>】

 

 3:10、「西街」着。シーズンオフとあって、人が少ない。外国人向けのオープンカフェが多く、雲南省大理の洋人街に似ているが、だいぶランクダウンした感じだ。ガイドブックには、桂林市よりも素晴らしく外国人は陽朔に直接宿泊所を求める場合が多くなっていると書いてあったが、それは単にバックパッカー用の安いホテル(?)がたくさんあるからに過ぎないのではないかとも思われた。もっとも今回は郊外にあるたくさんの景勝地を訪れることができないので、結論はでない。

【陽朔<2>】

 

 「西街」は短い通りでぶらぶらとゆっくり歩いたにも関わらず20分ほどで走破してしまった。途中、桂花蓮子羹というゼリー状の食べ物が売っており、「西街で一番有名」だとうたってあったので、トライ。一つ2RMB。甘酸っぱい味で、これはなかなかいけた。Zも、つまらなそうな感じだったが、せっかく来たということでアクセサリーを一つ購入。

【陽朔<3>】

 

【陽朔<4>】

 

 3:25、西街を抜けるともうやることがない。時間的にはもう一つ観光地を巡ることも可能だが、長い乗船で二人ともぐったりしているため、その元気がない。

【陽朔<5>】

 

 バス停まで行く途中で、「陽朔公園」というのを発見。「入ってみようか?」とZを誘うが、あまり気が乗らない様子。まっすぐバス停に向かうことにした。

【陽朔<6>】

 

 途中、草もちや小麦粉を丸めてあげた三角花という食べ物が売られていたので食べてみる。草もちは美味しくなかったが、三角花はまぁまぁ食べれた。

 4:40、バス発。桂林市内へ向かう(10RMB/人)。70分ぐらいはかかるとのこと。5時間もかけて船でやってきたのに、十分に楽しめず、不完全燃焼気味。やはり、二泊三日で桂林を抜けるというのは、無理があるようだ。周辺にある「龍勝」や「三江」へも寄れれば良かったのだが、今回は時間がない。明日は南寧へ向かわなければならないからだ。

 6:00、桂林市内、駅近くのバス・ステーションに到着。ホテルまでタクシーで戻る。 休憩して、8:00に食事へ。ホテルから数十メートルのところにある綺麗なレストランで食事をすることにした。ところが、今晩は外れ。ちっとも美味くない。
 食事後、軽く散歩をして、ホテルへ戻る。

【再び桂林で夕食<1>】

 

【再び桂林で夕食<2>】

 

 明日は南寧だ。なんとか午前中にたどり着きたいが、どうか?

2005年9月6日
 6:30、起床。どうもお腹の具合が悪い。昨日の料理のせいだろうか・・・。7
 7:30、ホテル発。保証金として払っておいた600RMBから2泊分の宿泊料416RMB差し引いたお釣りを受け取って、チェックアウト。
 天気予報では、今日までが曇り。今にも雨が降りそうな天気だが、本当に明日は晴れるのだろうか。

 タクシーで駅近くのバス・ステーションまで(7RMB)。

【桂林バス・ステーション<1>】

 

【桂林バス・ステーション<2>】

 



 7:50、バス発車。南寧までは保険料込みで88RMB。ふわっとした美味しいパン2個、ミネラル・ウォーター、新聞付という近頃の飛行機より、よほどサービスのよいバス。ただ、南寧まで3時間かと思っていたが、私の見間違えで4時間半であった。これなら列車の方が良かったかな?

 桂林を出てしばらくは、背の低い普通の山並みが続く。Zは出されたパンとバスに乗る前に購入したミカンをたらふく食べてひどく満足そうだ。

 10:00、サービスエリアで休憩。ピカピカの新しいサービスエリアだ。ここへ来て、再び桂林らしい。山水画の山並みをみることができた。

【真新しいサービス・エリア】

 

【豪華サービスのバス】

 

 10:10、出発。しばらく走ったところで、右手に真っ白な巨大な岩が現れた。さっと通り過ぎてしまったので、よくわからなかったが、ずいぶん印象的な岩であった。

この旅は「南寧探検記」に続きます。ご興味のある方は是非ご覧になってください。